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絵と意匠

2024年5月月報

GWと仕事の待ち時間に少し自主制作をしました。
短期で集中して取り組むお仕事の制作から得られるものの方が断然大きいのですが、ふわふわ考えていた取り止めないアイディアのために手を動かすのは、ストレッチのような爽快感と充足感があります。


夏目漱石の夢十夜 第一夜のための挿絵の栞

これまで適当にらくがきを描いて切って挟んでいた栞シリーズは、テキストの内容にちなんだ挿絵のような栞を作ってみたくなりました。
読んでいる本の文章から抜け出たような絵が挟まっていたら読者はドキッとするでしょうし、楽しそう。そんな感じの絵を一夜ずつ作ってみたいです。
夢十夜はどれもすごく短いので、それぞれの章に栞なんて必要ないのですけれど。

まずは第一夜、百合です。

余白はいつもの通り切り抜いて、紙の縁、絵の裏は真っ黒に塗りつぶしています。
落ちる影もきれい…というより漱石全集のページが美しいのです。日の光で紙が少し光ります。

この百合は1920年代に導入されたタカサゴユリがモデルなので、漱石がイメージした百合とは違うかもしれないのですが、「すらりと揺ぐ茎の頂に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が(略)」 という、細い茎、真っ白な一輪の百合のイメージが合うのでタカサゴユリにしました。

「『百年はもう来てゐたんだな』」ということでご容赦ください。


ヤグルマギクのシームレスパターン

散歩でよく行く公園の花壇のヤグルマギクからパターンを起こしました。


Happy weekend, twilight, cider

もうひとつはHappy weekendシリーズ。
原画はガラスペンで描いた墨一色の絵なのですが、サイダーの透明感を出そうとしてあれこれやっているうちに黒さが消えました。

イラストレーション「Happy weekend, twilight, cider」
イラストレーション「Happy weekend, twilight, cider」

配色のイメージは小学校の国語の教科書に載っていた短い物語の一場面です。
ピアノの先生の家でレッスンのあと、主人公と先生がサイダーを飲みながら会話するシーンがありました。
夕日の差し込む部屋でサイダーを飲むというイメージがきれいで印象深くて、そこだけ覚えています。


掲載情報1

『劇場のグラフィズム アングラ演劇から小劇場ブーム、現代まで』(笹目浩之著/グラフィック社 2024年3月刊行)にイラストレーションを担当した4作品の宣伝美術が掲載されました。

劇場のグラフィズム アングラ演劇か~ら小劇場ブーム、現代まで | グラフィック社

『劇場のグラフィズム アングラ演劇から小劇場ブーム、現代まで』 表紙
『劇場のグラフィズム アングラ演劇から小劇場ブーム、現代まで』 表紙

掲載されたチラシは、新国立劇場 演劇 シリーズ「人を思うちから」 『斬られの仙太』『東京ゴッドファーザーズ』『キネマの天地』、

第8回ブス会*『The VOICE』です。

思い出深いこれらの仕事が、伝説的なポスターと、近年の傑作ポスターと一冊にまとめられていて嬉しかったです。


掲載情報2

なんと初めて文章のお仕事をしました。

新国立劇場で公演中の作品『デカローグ5・6』のプログラムの「演劇とわたし」というページに文章が掲載されています。
このコラム、これまで各界の、実に錚々たる方々が執筆されてきたコーナーなので、ご依頼を頂いた時はとても驚きました。
演劇に詳しいわけでもなく、文章のプロでもないのに書いていいのかな…と思ったのですが、もう誰だったか、どんな人だったか思い出せない、知らない、たくさんの人たちにお礼を言いたいことがあった、と思い出してそのことを書きました。
拙い文章ですが読んで頂けたら嬉しいです。


今回は隔月報になりました。

2024年3月月報

昨年このブログに三本の記事を書き、タイトルが思いつかなくて『○月のらくがき』とつけていたのですが、「らくがき」という言葉がなんだかしっくりこないので、年明けからは月報にしよう、なにかしら月一で記事にできることをやろう…と、ぼやぼやしているうちに2024年も四分の一が過ぎてしまいました。

3ヶ月分をまとめます。月報といいながら端から四半期報です。

まず、年賀状はこんな感じでした。
今年は描き下ろしを断念して、過去作品を流用しました。


1月から3月半ばまでは、お仕事でたくさん絵を描かせていただきました。
去年の今頃は暇を持て余していたので、とても嬉しかった。

お仕事のひとつは、5月か6月ぐらいに形になります。
途中経過を拝見したのですが、本当にすてきでした!
とてもよいものになると思います。


もうひとつのお仕事では、濃いハッチングでの描写をご指定頂き、とても新鮮に感じました。

私は今まで薄く軽やかなハッチングこそ、技術的に優れたいい線だと思っていました。
それは私が線を濃く重ねる時に、形の見極められなさや、技術の未熟さを隠しているような気がしていたからです。
しかし絵に黒さを求めて頂けた時、この絵肌は個性のひとつなのかもしれない、と感じました。
このお仕事は続くので、この先どのような絵が描けるのかとても楽しみです。


自主制作は一点。本の中を旅する人シリーズの三人目ができました。
これは12月の記事にも書いていたおじいさん。
上半身から描き始めたら紙が足りなくなったので、紙を継いで下半身を描いたらとても長くなってしまいました。

一応栞なので、本に挟んで写真を撮ろうとしたら、A5判でもはみ出したので、漱石全集に挟んでみました。
写真のページは『京に着ける夕』。
こんな髭のおじいさんはまったく出てきませんが、漱石の亡き友子規との思い出と、子規へのあたたかい気持ちが溢れていて、とても好きなエッセイです。


それから、『イラストレーションファイル2024(玄光社 2024年3月29日発売)』下巻247ページに掲載して頂きました。
多くの方にご覧いただき、お仕事につながったら嬉しいです。
掲載をご快諾くださった関係者の皆さま、ありがとうございました!

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