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絵と意匠

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I makin' rough !

2022年11月の記事

まいまい堂個展「青い時」無事終了しました

昨日、個展「青い時」が無事に終了しました。たくさんのご来場本当にありがとうございました!
お客様が原画をご覧になって、楽しそうにして下さったり、驚いて下さったりしている様子を拝見できてとても嬉しかったです。
気にして下さった皆さんにも心より感謝申し上げます。

正直なところ、DMに「お越し下さい」「でも時節柄ご無理なさらず」と書かなければならない状況にぐったりしていたのですが、それでも来て下さるお客様がおられるなら、絶対退屈させない展示内容にしなくては!と質と量にこだわりました。

並んだ絵を見て、またご覧下さるお客様の様子を拝見して、お仕事で血眼で描いた絵も、落ち込んで描いた絵も、どれもちゃんと展示する意味があったと思いました。
たくさんサポートして下さったギャラリーの皆さま、すてきな差し入れをして下さった皆さま、本当にありがとうございました!


とても個人的な余談なのですが、大切な仕事のひとつに、宣伝美術のイラストレーションを担当させて頂いた『タージマハルの衛兵』(新国立劇場・2019)という作品があります。
インドのアゴラ、建築中のタージマハルの前に立つ二人の衛兵が主人公の二人芝居で、描く前に戯曲を拝読して、昔のインドを舞台にした戯曲にも関わらず、現在の私達が置かれている状況に通じるストーリーに強い衝撃を受けました。

実際の舞台はさらに素晴らしく、美しく、衝撃的で、忘れられない観劇体験となりました。

上演後、また2回のテレビでの放映後、ご覧になった皆さまが「追い詰められた主人公の二人にはジャングルに逃げてほしかった」とSNSでかなりたくさん書かれていたのを拝読していました。
私もそう思いましたし、同時に二人がジャングルで生き抜くことは容易ではないとも思いました。

2020年にコロナ禍が始まり、私のいた環境も大きく変わりました。
詳しいことは書きませんが、腕に痛みが出て、これはもう長年安全だと思っていた場所から逃げなくてはならない、と感じました。その時に思い浮かべていたのが『タージマハルの衛兵』でした。
逃げなかった場合の結末は、おおよそ『タージマハルの衛兵』と同じで、私は大切なもの、主に絵を描くことを失うだろうと感じました。
それでは逃げた場合は?これについては悲観的になっていたせいか参照するものが思いつきませんでした。
それでも、私はフマユーンがバーブルの手を取り逃げなかったことから教訓を得て、活かさなくてはならない。
作品に力をもらって、以前の私(一緒に観劇した友人と感想を話し合っていて、「本当に君はフマユーンだ…。」と言わしめました。)だったら絶対にしない決断をして、絵の手(というものはありませんが)を取ってジャングルへ行こうと決めました。

ジャングルに逃げた後はやっぱり大変でした。
気持ちが荒み、結局体調を崩しましたが、頂いたお仕事に取り組むことで少しずつ気持ちを立て直し、体調も徐々に良くなりました。

展示のお話しを頂いたのはその頃で、さすがに2022年の秋にもなればコロナ禍も収まっているだろうし、展示に向けての制作が心の支えになるだろうと開催を決めました。

さてご存知の通り2022年夏になってもコロナ禍は収まらず、展示の準備をしながら、何度も誰も来なかったらどうしようと心配していました。

しかし、準備のためにひさしぶりに引き出しから出した原画は、どれもモニターで見るよりもいきいきしていて、思っていたよりも自分が頑張って描いていたとわかりました。

搬入日、ヘロヘロになって準備を終え、ずらりと並んだ絵を見て、これは意外にも元気いっぱいな展示になったと驚きました。

また展示をご覧になって、喜んで下さっているお客様の様子を拝見できて、ここ数年のもやもやが少しずつ晴れていくのを感じました。

搬出後、OPAギャラリーのオーナーと奥様にあたたかい励ましとともに送り出して頂き、たくさんの贈り物と、原画を抱えて帰路につきました。
大荷物だったので座席指定の電車に席を買い、隣の席の方が親切にも大荷物を気遣って下さいました。
静かで温かい電車に揺られながら、もしかしたらこのまま描いていけるかもしれないと、一条の光が差し込んできたような気がしました。

ジャングルをいつまで、どこまで行けるかわかりませんが、ようやく少しずつ歩き方がわかってきたように思います。
また今回たくさんの心強い励ましのお言葉やご協力を頂き、一人寂しく歩いて来たと思っていたのは傲慢で、なかなかお会いできなかったとしても、お仕事でご一緒して下さる皆さまや、絵を見て下さる皆さま、家族も友人も心を寄せて下さっていたんだとわかりました。

また一歩ずつ進んでいきたいと思います。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

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